コンピューター音楽のためのインターフェース。

音ARの前にユーザーインターフェース(UI)のこと。


“音楽ソフトウェアを使うことで音楽の構成が可視化される、それによって制作の方向性が視覚情報に何らかの形で「しばられてしまう」(本人はConnectedと言っていた)恐れがあるというわけです。これは僕も常日頃感じていることで、MPCのようなシーケンスがきっちり見えないハードウェアで制作するのと、Logicでループを切り貼りするのでは、自然とできあがってくる音楽が変わってきます。Logicの方が細かいエディットができるのにも関わらず、勢いという点ではMPCで作ったものにかなわなかったりするから不思議です。”
[日誌] Pan Sonic + ATAKより引用


ソフトウェア、UI、が音楽に影響する。ハードウェア、つまり楽器の場合もそれは同じ。しかし、コンピューターを使った場合は容易にソフトウェア、UIを選択、変化、さらには作りだす事も可能。ハードウェア(楽器)が幾年もかけて進化させるUIをコンピューターは一瞬で変える事ができる。これは凄い事。

さて本題。コンピューター音楽(ちょっとDTMとはニュアンスが違う)のUIについての考えてみる。

Reactable

まず思い浮かぶのは、Reactable。
Björkがライブで使用したことで有名になり、アルスエレクトロニカでゴールデンニカ賞を取った「楽器」。

実際のところ、普通のシンセサイザーと何ら変わらない。ただ、インターフェースが透明ブロックになっていて、それぞれの背面に固有のマーカーが埋め込まれている。それをカメラで撮影して、マーカーの位置、角度。さらには指の位置を読み取る。読み取ったデータはwikipedia:OSCと呼ばれる通信プロトコルでソフトウェアに信号を送る。その後は普通のシンセサイザーだ。ハイテクなMIDIシステムのようなもの。

このインターフェースの基幹部分、TUIOクライアントという名前のマーカー認識からOSCプロトコルに変換する所までは、http://tuio.lfsaw.de/にてアプリケーションとして公開されている。つまり、半透明の板とカメラ。パソコンがあれば、このインターフェースは完成する。オープンなインターフェース。これを音楽シンセサイザー以外に、なんのインターフェースに使ってもいい。


これを初めて見たときwikipedia:テルミンを連想してしまった。テルミンがコンピューターの中で論理的に作曲ツールとして再構成されて、reactable。


Reactableの凄いところはテルミン的でありながらGUIの機能も兼ね備えているところ。かな。これは最近、戦国時代に突入しつつあるマルチタッチスクリーンと同様。iPhoneがそうであるように、文字の入力インターフェースとしては使いにくい。しかし、感覚のダイレクトな接続インターフェースとしては優れている。もちろん、これを使う事で、曲が自由自在になんては作れないと思う。冒頭で述べたように、「UI」つまり音楽でいう「楽器」を自分で作れるコンピューターの選択肢。


テルミンつながりで、また余談。DTMは現代音楽と結構つながってると思う。今、DTMソフトの主流はタイムラインベースの編集画面。ほとんど図形楽譜。スタディー〓とかの記法に似てる。と思う。


同様のものもいくつかある。
岩井俊雄《テーブルの上の音楽》"Composition on the Table"
透明ブロックではなく、手で直接。これ、じつは8年前の作品。今ではこれがオープンソース



Monome

マトリックス型ボタンのインターフェース。

dj64 for Monome - by Bitbasic from simon on Vimeo.
http://monome.org/
ボタン型インターフェースの利点は、視覚に加えて触覚で、操れる。ってことか。何しろ、タッチパネルは触ったっていう感触がない。ライブで使うとなるとやはり、ボタンは安心。
これも、前述のOSCで信号をやり取り。OSCは、プログラムが非常に簡単。プログラマーならすぐにOSCをあやつれる。何たってインターネットと同じ形式だから。


TENORION

同様のボタン形式のインターフェースを持つ楽器としてはTENORION
これは、作曲インターフェースというよりはほぼ岩井俊雄さんの作品。かなと。
しかし、TENORI-ONのサイトで、ある本質をついた発言をしている。

“本来楽器には、ヴァイオリンならヴァイオリンの美し形と音と演奏方法があり、それらのどれが欠けてもなりたたないものです。ところが電子楽器は、その形と音と操作性の必然的な関係性がなくなってしまています。もう一度楽器の本質を見つめなおし、TENORI-ONを真のデジタル時代にふさわしい楽器にしたい、と考えています。”
TENORI-ON 岩井俊雄




iPhone

またしても。iPhoneに搭載されている機能。マルチタッチスクリーン、3次元加速度センサ、GPS、それで音楽を作る。って試み。今のところ既存のマルチタッチインターフェースと決定的に違うってアプリケーションは登場してない(と思う。知ってたらご連絡を。)。
作曲インターフェースでは無いが、GPS、加速度センサと音楽再生。っていう面白い試み。
World 9 World


しかし、権利関係か、iTunesのライブラリにはアクセスできないらしい。これは残念でしかたない。というか魅力が半減。

Lemur


http://www.jazzmutant.com/jp/lemur_overview.php
似たマルチタッチスクリーン。でLemur。お値段は張る。しかし、高い精度で、自在に作れる。お金があれば、、、、、ね。







UIは目立てばいいってもんじゃない。画像認識のも、面白いけど、実際はフレームレートの枠がある。iPhoneもキー形式の入力より、大分反応速度は遅い気がする。音楽に於いて、致命的欠陥。またUIの欠陥が、そのUIをつかった音楽を特徴づけることも、あるとおもう。

おすすめUIがありましたら、教えてください。